俄歩
高嶺を歩けなくなったいまでも 「自然と向き合える体力 自然を味わえる感性 自然に応えられる知力を大切にしたい」  という心根は持ち続けていたいものです
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俄歩人 (がふと)

Author:俄歩人 (がふと)
高嶺は2013年9月の槍ヶ岳が
最後となりました。
いまは 季節の移ろいを想い出
の地に求めて彷徨しています。
年に一度、写真集「岳と花」を
記載。
(さいたま市 浦和 在住)



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いにしえの峠道
P1020953.jpg P1020975.jpg P1020970.jpg
徳本峠            霞沢岳           穂高岳     (写真はクリックして拡大してください)

 その昔、「たわ」「たを」「たをり」「たむけ」などと呼称された峠、
働きに出るために越えた道、商いの荷を運んだ道、巡礼が難渋して越えた道、いずれにしても
日常の生活圏外へ越える必要のあった人の意思によって踏み固められた道である。

 古来から峠は人の往き交う道、文化や異なった習俗を伝えた道であって
何となく知的な文化の匂いが漂う。
今年も1月厳冬に 北八ヶ岳、雪の中山峠を歩いたほど高嶺の鞍部にある峠好きの私であるが、
峰々を歩くうち、過去、印象に残った峠が幾つかある。
残雪の針の木峠(北アルプス)、新緑の十文字峠(奥秩父)、夏の乙見山峠(頚城山塊)、
秋の舟鼻峠(奥会津)などなど・・・。

 山に登るという行為をとうして理解される文化は結構多岐に亘っているが、
とりわけ「峠の成り立ち」や「頂にまつわる信仰」には 想いを深くするものがある。
今回訪れた「徳本峠」(とくごうとうげ 2135m)もそのひとつである。

 昭和8年、上高地に通ずる釜トンネルが開通する以前、W.ウエストン、小島烏水を
はじめ近代アルピニズム醸成の象徴ともいえる槍・穂高へのアプローチとして、
幾多の先達が越えたこの峠道。
信州安曇村島々宿から島々谷に入り、南沢を経て徳本峠まで16キロ強、さらに峠から
上高地明神まで3キロ強、上高地入山まで約20キロの道程である。


 今夏、体調がいまひとつの私は 16.2キロ標準CT7時間30分の島々宿からの入山は
自信が無く、逆コース、上高地バスターミナルから明神岳を背負って6.8キロ、標準CT
3時間20分の徳本峠へ向かった。
前泊した定宿、坂巻温泉からシャトルバスで上高地へ、宿の女将さんによれば
10日ぶりの晴れ間とか。
                           坂巻温泉前の梓川に架かる旧道 P1020932.jpg


「山行クロニクル No.71」 徳本峠 (霞沢岳撤退)  単独
’11.8.28(日) 坂巻温泉(前泊)
    8.29(月) 坂巻温泉=上高地B.T~明神~徳本峠~徳本小屋(泊)
    8.30(火) 小屋~ジャンクションピーク~霞沢岳K1ピーク手前で撤退
            ~徳本峠~明神~上高地B.T=中の湯温泉(泊)

P1020934.jpg P1020936.jpg P1020938.jpg
朝の河童橋         梓川と岳沢         清水川

 河童橋から梓川左岸、槍や穂高の往き帰りに通いなれた道を 散策するハイカーや
観光客に交じって明神へ。
明神の先、白沢出合・徳本峠入口から キツリフネの咲き乱れる峠道へ分け入る。
観光客の居ない静かな登山道を坦々と辿る。
白沢と別れ、黒沢沿いの山道はセンジュガンピが楚々として小さな白花を開いていた。

峠道 点描
P1020939.jpg P1020942.jpg P1020945.jpg

P1020947.jpg P1020952.jpg
明神岳を背負う      最後の水場

 小さな沢を二度ほど徒渉して最後の水場で一服。大滝山(2614m)と霞沢岳(2645m)の
鞍部、徳本峠(2135m)へ。
島々谷から入山し 長駆この峠に立って、初めて眼前に穂高の岩峰を眺めた古の人々は
皆、一応に感激したことであろう。まさにそう想う。

P1020955.jpg P1020959.jpg 徳本小屋

 徳本の小屋、昨年、新しく増築されたが、手前の昔からの部分は、このほど
登録有形文化財になったという。
たまたまこの夕方は 弦楽器ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者 品川 聖氏のソロ・コンサートが
ひらかれ、食前のひとときを楽しく過ごした。
                                           品川 氏 P1020962.jpg

 この夜の小屋泊りは約20人、古道島々谷を登ってきた方はその半数、
食事・休憩を含め9時間近くを要した と語る。
途中の岩魚留小屋付近の風情が先達の山行記を彷彿とさせ胸を熱くした とのこと。

 翌日は上高地からの人も含めほとんどが霞沢岳へ。
大滝山から蝶ヶ岳を目指す方は一人もいなかった。

P1020965.jpg P1020964.jpg
峠から早朝の穂高岳   ジャンダルム・ロバの耳、奥穂、明神、前穂(右)をズーム

 徳本峠からでも霞沢岳は往復約9キロ、休みなしで7時間30分のロングコース。
私はあまり体調に自信が無く、歩けるところまでと決め、6時、最後に小屋を出る。

 混交林の急登を電光型に攀じり、ジャンクションピーク手前のスタジオジャンクションと
名付けられた展望所で休止。
朝の澄みきった大気の中、左の西穂~奥穂~前穂の穂高岳の岩峰を楽しむ。
この岩壁に遮られ、北穂や槍ヶ岳は見えない。
よく訪れた涸沢からの風景とはまったく異なる姿を満喫する。
かって歩いたそれぞれのピークへの岩稜を想い出しながら一服、
満ち足りたひとときを味わった。

P1020970_20110901162918.jpg ジャンダルムから~右端の前穂のピーク

P1020971.jpg 前穂とその北尾根

P1020973.jpg P1020974.jpg ジャンクションピーク

 島々谷を覗くジャンクションピーク(2428m)で朝食を自炊。
この先、ともかくも霞沢岳を眺められるところまでと決め、針葉樹林下のぬかるみを辿る。
最初の突起、K1ピークの手前で 霞沢岳を眺め、9時過ぎには踵を返した。

P1020975_20110901164139.jpg P1020977.jpg P1020976.jpg
霞沢岳         霞沢岳(左)とK1ピーク(右)  乗鞍岳

 霞沢岳山頂には届かなかったが、穂高の岩肌や乗鞍岳の眺望を楽しみ小屋に戻った。
下山道で出遭った秋の実り
P1020978.jpg P1020981.jpg P1020983.jpg P1020994.jpg

 小屋前で寛いでいると、この歴史ある旧道の整備に7人が チェーンソーこそ持たなかったが
ナタやクワを担って上高地側から登ってきた。
これから島々まで16キロを歩いて点検・補修する という。
リーダーの方としばし歓談。
その昔、この道を島々宿から牛を追いながら 上高地宮川や徳澤の放牧場まで峠越えをした時代の
聞き語りを楽しく伺う。

P1020993.jpg P1020986.jpg 峠のダケカンバと眼下の梓川上流

 午後、峠を降り 安房峠旧道の中の湯温泉に宿をとる。
まだ若かりし頃、釜トンネル入口の対岸高台にこの宿があった時代に泊ったことはあるが
安房峠旧道中腹に移転してからは初めての泊り。
立派になった湯宿に吃驚した。

P1030002.jpg P1030004.jpg 中の湯温泉
                                単純硫黄泉 秘湯の会 会員の湯


 近代アルピニズムの先駆けとなった方々の山行記に語られた徳本峠、
釜トンネル開通後も あえてこの古道を好んで歩いた記録に親しんでいた私にとって
一度はこの峠に立ってみたい という想いがかなった山旅であった。
                                    (写真はクリックして拡大してください)












     








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この記事に対するコメント

こんばんは。
坂巻温泉、上高地に行くときにいつも
前を通り過ぎていますが、よい温泉なんで
しょうか?

上高地から徳本峠への静かな山歩きは
いいですね。こういう山歩きもしてみたいです。
島々からの道のりは長いですが、穂高の
景色にほんと感動しそうです。

霞沢岳は地味でたいへんそうなイメージがありますが、
静かで歩き甲斐がありそうです。

きれい名写真ばかりですね。上高地に行きたくなりました。
【2011/09/01 22:18】 URL | ブル #- [ 編集]

早々のコメントをありがとうございます
 ブルさん こんばんは
上高地から入山する時は さわんどの駐車場乗り継ぎではなく
いつもこの坂巻温泉に車をデポすることにしています。
まだ梓川の対岸に立地していた昭和30年代から利用、宿は豪華ではありませんが、
源泉70度以上、全館の暖房を賄っても余りある湯量豊富な源泉掛け流しの湯宿です。

 上高地梓川の左岸の霞沢岳は、右岸の焼岳、穂高岳や明神岳に目を奪われ
一般の方にはあまり馴染のない地味な隠れ名山で、秋から初冬にかけて
よく歩かれているようです。
今回は 徳本峠に立ったことで充足し、登頂の気力に欠けていました。
【2011/09/01 23:34】 URL | 俄歩人 #t3k.yir2 [ 編集]

温泉と峠と
徳本峠は、以前より大変興味のあるところですが、なかなか訪れる機会に恵まれませんが、
ガイドブックとは違う視点でご紹介いただき、大変興味深く拝見しました。
最近はすたれたような話も聞き、心配していましたが、そんなこともないようですね。
安心して、近い将来、島々から歩きたいと思っています、できれば。

峠って、歴史感じるところがあり、ロマンに満ちていますよね。
南アルプスでは、三伏峠から転付峠を結んで歩いたこともありますが、北アルプスでも、徳本峠から中尾峠を結ぶなんてのもいいかもしれません。


そうそう、通るたびに俄歩人さんの定宿、坂巻温泉が気になります。

それと、高校生の頃、対岸にあった中の湯を見たような記憶があります。。
【2011/09/02 03:03】 URL | devilman #- [ 編集]

峠を繋ぐ昔道
 devilmanさん こんにちは
島々から徳本峠越えで上高地に入り、中尾峠越えで飛騨蒲田に至る、
まさに松本と高山を結ぶ主要な昔道ですね。
実は 私もまったく同じことを考え、焼岳小屋に泊る予定でしたが
体調不良で断念しました。

 体力の他、気力の衰えをも感ずる昨今、もはやdevilmanさんのように
テントを担う力もなく、単独行ゆえの緊急用ツエルトと自炊用具を持つのが
やっとのありさまです。
それでも小屋泊りで歩けるうちは・・・と。

 いつもコメントをありがとうございます。
新調したテントの使い心地をはやく試したいことでしょうね。
(徳本峠にもテン場があり、当日も利用者がいました)
【2011/09/02 08:21】 URL | 俄歩人 #t3k.yir2 [ 編集]


素晴らしいアルプスの写真をありがとう。48年程前、大学の時、上高地へ2度行き懐かしく思い出されました。昔と変わらない清流・梓川、いつ見ても美しい河童橋に癒されます。
 体調が芳しくないとの事、気をつけて下さい。本でしか見ることが出来ないアルプスの写真、素晴らしい出来ばえです。
【2011/09/02 15:22】 URL | ito+yoshiaki #- [ 編集]

こんにちは itoさん
 朝の清々しい上高地はいつの季節に歩いても爽やかな雰囲気に
満ちています。昔と変わったのは人の多さでしょうか・・・。
リタイアしてからも二年に一度は上高地から入山、好きな穂高の峰々を
歩くようにしています。
穂高岳登高については、’06年10月、’08年10月の過去ログを
覗いてみてください。

 いつもコメントをありがとうございます。
上京の折はまた一献の機会を持ちたいですね。
【2011/09/02 16:03】 URL | 俄歩人 #t3k.yir2 [ 編集]


 こんばんは!
徳本峠への道、相方と歩きたいね・・・と話しながらまだ行った事がありません。
俄歩人さんの記事を見てたまらなく行ってみたくなりました。
静かな山歩きの好きな方が、結構いらっしゃるのですね?
霞沢岳はこちらから登れるのですか? いつも眺めているだけですが、
歩いてみたいですね~。

 10月に娘たちと何処へ行こうか?と坂巻温泉・中の湯も考えたのですが、
結局別の所に決めました。 中の湯は、まだ学生時代、対岸にあった時から気になり、
いつかあの温泉に入ろう・・・と思っていたのですが、気がついたら崩れて移転して
いました。 いつか温泉も含め、峠を楽しみたいです。
お疲れさまでした。
【2011/09/02 23:36】 URL | キレンゲショウマ #iAM0ElfQ [ 編集]

こんばんは キレンゲショウマさん
 残暑の富士登山、お疲れさまでした。
相変わらずお元気で飛び回っていらっしゃいますね。日々更新される自然との対話、
山野草の勉強とともにいつも楽しく拝見させていただいております。
また いつもコメントをいただきありがとうございます。

 霞沢岳は峠から往復約9キロです。
この峰からの穂高岳の眺望は素晴らしいものでした。
体調整わず、私は明神からでしたが、島々谷からの徳本峠越えは
山を愛する方々にとって 一度は歩いてみたい古道ではないでしょうか。
是非ともお薦めいたします。

 静かな山好きが集まる徳本の小屋は 昨年新築され、30人程で一杯という
こじんまりしたものですが、清潔で好もしい小屋でした。
この峠越えでの上高地入山は素晴らしい想い出となられるでしょう。
 
【2011/09/03 01:22】 URL | 俄歩人 #t3k.yir2 [ 編集]


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