俄歩
高嶺を歩けなくなったいまでも 「自然と向き合える体力 自然を味わえる感性 自然に応えられる知力を大切にしたい」  という心根は持ち続けていたいものです
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俄歩人 (がふと)

Author:俄歩人 (がふと)
高嶺は2013年9月の槍ヶ岳が
最後となりました。
いまは 季節の移ろいを想い出
の地に求めて彷徨しています。
年に一度、写真集「岳と花」を
記載。
(さいたま市 浦和 在住)



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鹿島槍ヶ岳~針ノ木岳 縦走
「山行クロニクルNo.14」
 鹿島槍ヶ岳~針ノ木岳   縦走          単独
‘07年9月9日(日)~9月14日(金)

 初秋の静かな尾根歩きを楽しむため信州大町・扇沢から入山、爺が岳~鹿島槍ヶ岳、
また戻って爺が岳~岩小屋沢岳~鳴沢岳~赤沢岳~スバリ岳~針ノ木岳までと
小屋泊まり4泊の余裕ある日程で小さな秋を探してきた。

                                     (写真はクリックして拡大してください)
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鹿島槍ヶ岳         つるぎ岳          キレットと五竜岳

9. 9(日) 浦和=大町・扇沢=扇沢ロッジ(泊)
  10(月) 扇沢~柏原新道~種池山荘(泊)
  11(火) 種池~爺が岳~鹿島槍ヶ岳~冷池山荘(泊)
  12(水) 冷池~爺が岳~種池~岩小屋沢岳~新越山荘(泊)
  13(木) 新越~鳴沢岳~赤沢岳~スバリ岳~針ノ木岳~針ノ木小屋(泊)
  14(金) 針ノ木峠~雪渓~扇沢=浦和

9. 9(日)第一日目
 遊び盛りの妻を都心に送り、その足で信州大町、扇沢まで走り、ロッジに前泊。
ゆったり湯に浸かり明日からの期待値を膨らませる。

9.10(月)第二日目
 曇天、朝7時30分、柏原新道を登り始める。混交林の中、もみじ坂の急登を経て、ケルン、石畳。
そしてガレ場を過ぎたあたりから小雨を浴び始めた。
扇沢登山口1350mから種池2450mまで1100mの標高差あるも、この柏原新道は丁寧に整備
された大変歩きやすい道である。整備に汗された方々に感謝したい。
ベニバナイチゴの赤い実、ナナカマドの赤い実が目立つ頃、種池山荘の前に飛び出す。11時過ぎ。

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ベニバナイチゴ       ゴゼンタチバナ

 小屋で昼食を作り、雨の様子を見るが、ますます雲が低く厚くなり且つ雨脚が強くなってきたので、
冷池まで足を伸ばさずここで停滞とする。 毒へびはいそがない・・・のだ。 
装備を解き小屋周辺を散策、小さな種池の周りは名残のハクサンフウロが少し、沢山のミヤマリンドウ
は花弁を閉じ、チングルマは巻いた長い毛の果実が風車のよう、まさしく秋色だ。
小屋の東に爺が岳、北に鹿島槍、小屋正面の南には縦走終点の針ノ木岳、蓮華岳がそれぞれ
大きく聳えているが、皆、その高嶺を雲に隠し、全容を見せない。

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ミヤマリンドウ       秋のチングルマ      雲の中の針ノ木・蓮華岳            黄昏

 雨が激しくなり小屋の喫茶室でしばし読書。3時頃、北のキレット小屋から雨の鹿島槍、爺が岳を
歩いてきた同世代のご夫婦と相部屋となる。楽しみにしていた鹿島槍ヶ岳頂上からの眺望が
得られず大変残念がっていた。
 夕食後の天気予報はあまり芳しくない。午前中の降雨確率50%、但し、気圧の配置は西風が
強くなれば期待が持てそうだ。 8時就寝。

9.11(火)第三日目
 昨日が嘘のような快晴。夜明けとともに頭を隠していた嶺々がそのすべてを顕した。
北アルプス北部の真ん中に立っているのを実感する。

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早朝の爺ヶ岳への道   ゴールの針ノ木岳     薬師岳方面 

 朝食はコーヒーと携帯固形食糧で済まし、6時、朝陽に向かって爺が岳を目指す。
南峰、中峰、北峰と三つのピークを持つ爺が岳は中峰(2669m)が最も高く、南峰と中峰の双方に
三角点があった。

DSCF1446.jpg DSCF1445.jpg DSCF1456_20071212144704.jpg DSCF1450.jpg
爺が岳南峰頂上     つるぎ岳と冷池山荘    鹿島槍ヶ岳
 
 秀峰、鹿島槍の両耳を真正面に見ながらのハイマツ帯の降りでサルの群れに出会う。
黒部川の支流 棒小屋沢方面から冷尾根へ登山道を横切っていく、その数、小猿を含めて7~8匹。
晴天の上、このサル軍団では雷鳥には遇えそうもない。

 赤岩尾根からの登山道を併せる冷乗越を経てオオシラビソに囲まれた冷池山荘 8時着。
宿泊手続きを済ましザックを預け、自炊用具と食料のみのサブザックで身軽に出発。
早くも信州側(東)の雲が昇ってきはじめていたが、越中側(西)はまさにピーカン。しかも西風。
午前中の天気は保障されたようなものと思い、つるぎ岳や立山三山を横目に見ながら双耳峰目指
して汗をかく。

 前衛の布引山(2683m)で小休止。微風が心地よい。
向かう左手には 龍王岳、雄山、大汝山、富士の折立、真砂岳、別山、つるぎ御前、一服つるぎ、
前つるぎ、そして主稜つるぎ岳本体、さらに白ハゲから猫又山、毛勝山と大縦列が見渡せる。

 ここから鹿島槍ヶ岳頂上までは森林限界を越え、わずかのハイマツと夏の名残りの高山植物 
そして赤く紅葉したクサモミジの尾根を登っていく。
コケモモの赤い実やアカモノの他、イワツメクサがまだ残っていた。
晴天の頂上、鹿島槍南峰(2889m)に10時30分着。 まさに絶景。いかにも北アルプスの真々中
である。
北はキレットを経て五竜、唐松、白馬鑓、白馬まで、西は先程のつるぎ、立山、南は針ノ木、蓮華
遠くに薬師、水晶、鷲羽、さらに槍・穂高の嶺々まで視界に入る。

DSCF1461.jpg DSCF1465.jpg DSCF1494.jpg DSCF1462.jpg
鹿島槍北峰とキレット  五竜・唐松・白馬鑓・白馬の峰々     つるぎ岳             山頂
 
 まさしく至福の時間だ。これほどの爽快感は昨年秋 奥穂高岳や涸沢岳の頂上で味わって以来だろう。
先着者が降ったのも気づかず、峯々を眺めながら あの山に登ったのは何時だったか、どんな状況
であったかを次々に回顧。

 11時昼食を作り始める。レトルトカレーに鮭雑炊の大盤振る舞い。さらにコーヒーを沸かし寛ぐ。
信州側からの雲により北峰が隠れはじめたのに気づいたのが12時。一時間も頂上を独占。
冷池側から単独行の同年輩の人、またキレット側から同じく同世代のご夫婦が登頂してきたのを
潮に 既に眺望のきかなくなっていた北峰を諦め、のんびり降りにかかる。

 降りは足元の秋の序章をカメラに収めながら鼻歌まじり。冷池山荘に着き、山荘前のテラスで 
生ビールの一人乾杯。携帯電話を試すが圏外の表示が点いたり消えたり、傍らに居た若いカップル
が こちらへ向けると通じますよと親切に白馬村方向を示す。
妻にダイヤル。3度目にやっと出てくれた。
何度も掛けなおしている私を見て「通じませんか?」と聞かれ、「僕の恋人は気分が悪いとなかなか
出てくれないのですよ」と答え、爆笑を買う。

 夕食後、遠見尾根を登り五竜岳からきた同世代の男性と山の秋の風情を語り合い、
7時過ぎには寝床に入る。

9.12(水)第四日目
 早朝は驟雨。昨日から朝食は自炊と決め、定番のコーヒーと携帯食料、それに重いおもいをして
持参したみかんを味わう。今日は昨日歩いた道を再び種池まで戻り、岩小屋沢岳を越えて
新越山荘まで稜線を楽しむ約5時間の短い行程。

 弁当を受け取り7時まで空模様の様子見。越中側が明るくなってきたのを確認して小屋を出る。
途中、爺が岳南峰で雨が上った。
種池山荘の自炊室でスープを作りお弁当を広げる。錦糸たまご、干瓢、ひじき、でんぶ4色のちらし
ご飯。存外においしく食べられた。

 10時、すっかり晴れ渡り陽射しが暑い。小屋番氏に 今日は熊に気をつけてくださいと念を押され
ながら、ダケカンバ、オオシラビソの樹林、下生えは笹やシャクナゲが繁る尾根道に分け入った。
高度を上げハイマツ帯に近くなるとサルの落し物が一杯、幸い熊のものは見当たらずいささか
ホッとする。
岩小屋沢岳手前の小ピークのハイマツ尾根でホシガラスが10羽近くもおいしそうにハイマツの実を
食べていた。こんなに群れているのを見たのは初めて。しばし眺め入った。

DSCF1495.jpg 岩小屋沢岳 

 岩小屋沢岳(2630m)頂上 11時30分。種池から高度差約200メートルのだらだら登りに意外と
時間がかかった。日本海が見える。但し、その先海と空の境は霞んで判然としない。
つるぎ岳は指呼の間にあり、小窓、三の窓、長次郎谷、平蔵谷の4本の雪渓が ちょっと薄汚れて
いたが 切れ込んだ谷に白い流れを見せている。登路を振り返ると鹿島槍から遠く白馬まで稜線と
ピークが延々と続いている。

 この先まだ小ピークがあり、新越山荘は見えないが、翌日歩く予定の鳴沢岳や針ノ木岳が
美しく迎えてくれている。確かこの方向にあるはずと目を凝らして見るが、深く刻み込まれた黒部川
下廊下は見えない。
次の小ピークまで足元にはタケシマランの赤い実やアカモノの小花が目立つようになった。

DSCF1492.jpg DSCF1505.jpg DSCF1493.jpg
タケシマラン        アカモノ           ハクサンフウロ

 新越山荘1時着。小屋周辺は夏の名残のハクサンフウロ、ハハコグサ、秋のミヤマリンドウなどで
一杯、夏の季節は素晴らしい花景色だろうと想像する。
受付を済ませ小屋前で針ノ木岳や蓮華岳を眼前に寛いでいると同年代の女性3名と男性1名の
パーティーが到着。一緒にビールで乾杯。

 彼等はこの後立山連峰を完走しようと5日前に白馬岳からスタートしてきたとのこと。
九州福岡の山岳会のメンバー。リーダーの男性と気が合い、持参のブランディで早めの宴会となった。
春から秋は、毎月一度、九州から遠征して北や南のアルプス、さらには奥秩父にも足を伸ばして
いるようだ。福岡からでは2~3日の山行では往復の足代がもったいなく、遠征するときはどうしても
最短一週間単位の計画になるとのこと。この先は私と同じく針ノ木岳まで往き、雪渓を下山するという。
往路の夜行列車も含め8泊の行程。皆 健脚揃いだ。
前泊の冷池山荘では 五竜岳を越えキレット小屋をパスして鹿島槍を登降してきた為、夕方5時過ぎ
に小屋に入り、小屋の親爺さんからえらく怒られたそうだ。

 この夜の泊り客はこの他同じルートを歩いてきたやはり同年輩、単独行のアマチュアカメラマン、
反対の針ノ木から来た若者一人、合わせて7人の少人数のおかげで単独行3人はそれぞれ一人部屋
で寛ぐことができた。
明日の予報は晴れ。消灯後の眼下の大町の灯が宝石箱のように美しい。熟睡。

9.13(木)第五日目
 またも快晴。コーヒーとスナックバー、ゼリー飲料とみかんの朝食。美容食のようで何となく気恥かしい。
この日は、針ノ木小屋まで4つのピークを越える標準行程6時間の岩峰尾根歩き。
福岡の4人組に15分遅れ、6時45分、小屋を出る。まずは鳴沢岳(2641m)までは1時間の急登、
はやくも汗だくになる。
                                             鳴沢岳DSCF1509.jpg

    
右に、つるぎ、立山を眺めながらさらに赤沢岳(2677m)まで1時間強の尾根歩き。
赤沢岳頂上で先行4人組に追いつき、大休止。

 眼下に黒部湖、立山・黒部アルペンルートのロープウエイがおもちゃのよう。
この頂上からは つい2ヶ月前の7月中旬に、室堂から龍王岳、鬼岳、獅子岳を越え泊まった
五色が原山荘、さらに鳶山、越中沢岳、薬師岳、太郎平と縦走したルートがはっきり見える。
やはり薬師岳の重厚な大きさは圧巻である。
あの時は 北薬師岳から薬師岳の稜線は雨とガス、強風に煽られ足元しか見えなかったが・・・。

DSCF1514.jpg DSCF1512.jpg DSCF1513.jpg
黒部湖           スバリ岳           針ノ木岳

 行く手には角張った頂を持つ岩塊スバリ岳、その奥にまるみのある頂の針ノ木岳を見ながら
岩稜尾根を慎重に歩き出す。一旦200メートルを降り、改めて標高差300メートルの急登。
結構 きつい。右側はずっと翡翠色の黒部湖、時々、イワヒバリの涼しげな声。

 最後の急登を喘ぎ、スバリ岳頂上へ。コマクサはもう花を落としてしまっていた。
遠く遥かに槍や穂高を望み、指呼の間の針ノ木岳へ足を進める。

 小刻みの岩稜のアップダウンを経て、ザレた急登にかかる。5分登っては息を整え、また励む。
頂上直下、100メートルぐらいのところで、疲れていたのか、何かほかの事に気をとられていたのか
気がついたたら登山道からはずれ急斜面のガレ場を攀じっていた。元に戻るか思案したが、
30メートルほど上部に棚が見えたのであれが登山道だろうとガレ場の斜面を両手両足を使い、
のぼり始めた。
 が、簡単にはいかない。手を掛けるとガレた岩はガラガラと崩れ、足場も確保できない。
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせ、息を整える。
黒部湖への谷側には人も居ないので、ガレた小岩を手でほじり落とし、固い岩を探り当て僅かずつ
身体をずり上げる。1メートル身体を持ち上げるごとに小岩がガラガラと崩れ落ち派手な音を立てる。
その音で気がついたのだろう、頂上から先行4人組の声が掛かる。

DSCF1515.jpg 針ノ木岳からの眺望

 後で、針ノ木小屋で聞いたら、救助に行こうか と声を掛けたとのこと。こちらは手が離せないので
声だけで大丈夫だと叫ぶが、届いたかどうか。僅か30~40メ―トルの登りに30分近くをかけて
登山道に復帰。冷や汗をかいた。
やはり元の道まで引き返すという鉄則に従わなかった罰だ。頂上について反省しきり。

 後から来たカメラマンの彼は、何だか変なルートを楽しんでいるな と思ったそうだ。
針ノ木岳(2820m)の頂上で大休止。最後の360度の眺望を楽しみ小屋へ降った。
先行したグループは、空身で蓮華岳まで往復に行ったようだが、ガレ場の苦闘で疲れた私はパス。
小屋の夕食では結構な肴になってしまった。再び反省。全員が相部屋になり、
下山前の一夜を楽しく語らい、8時就寝。

9.14(金)第六日目

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針ノ木峠          僅かに残った針ノ木雪渓

 小雨。朝食はコーヒーとチョコレートのみ。小屋主から、雪渓が縮んでいるのでアイゼンを使わず、
捲き道を下山するように言われ、6時30分、トップで小屋を出る。
雨に濡れたジグザグの急坂を降り、雪渓上部に着くが、歩行禁止の立て看板。
雨で増水した沢の渡渉を2~3回繰り返しながら側道を降る。

DSCF1523.jpg
 
 何回もの高巻きを強いられながらクサリ場を経て大沢小屋まで2時間半の大降り。
雪渓を降るより時間が取られた様だ。はや小屋締めをした大沢小屋を素通りし、さらに1時間強、
10時過ぎ、やっと扇沢ターミナルに着いた。定番の生ビールとラーメン。

 扇沢ロッジに止めた車で、葛温泉から引き湯した大町温泉郷の立ち寄り湯「薬師の湯」へ直行。
5日間の行程を振り返りながら汗を流す。浴後、休憩室でビールと枝豆を楽しんでいたら福岡の
4人組とバッタリ、帰路は名古屋から新幹線とのこと。
何処かでの再会を楽しみに別れ、夕方、5時30分浦和帰着。

天候に恵まれ、秋の序章に親しんだ山行だった。

DSCF1517.jpg DSCF1489.jpg           (写真はクリックして拡大してください)

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