俄歩
「山に登ること」 は、与えられた条件の中で新しい経験を積むことに 他ならない。 だから、  自然と向き合える体力  自然を味わえる感性  自然に応えられる知力  を大切にしたい。
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Author:俄歩人 (がふと)
 学生時代に歩いた山、歩きそびれた山をひとり
静かにたのしんでいます。



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八ヶ岳
「山行クロニクル NO.10」

20070825224432.jpg


 南八ヶ岳:硫黄岳(2760m)横岳(2829m)赤岳(2899m) 単独
‘07年 6月20日(水)〜6月22日(金)   2泊3日
6.20(水)浦和〜首都高〜中央道(南諏訪IC)〜八ヶ岳西麓 美濃戸口〜
       美濃戸〜北沢〜赤岳鉱泉(泊)
6.21(木)鉱泉〜赤岩ノ頭〜硫黄岳〜横岳(奥の院)〜大権現〜三叉峰〜
       二十三夜峰〜地蔵仏〜赤岳頂上小屋(泊)
6.22(金)小屋〜赤岳頂上〜文三郎尾根〜行者小屋〜南沢〜美濃戸〜美濃戸口〜
       中央道〜浦和

 先月、残雪の甲武信岳から十文字峠への道を歩いたとき、時ならぬ5月の雪に覆われた
南八ヶ岳連峰が美しく再び登りたいと強く意識し、すぐ今年の山行年度計画を練り直し 
どうせ登るならツクモグサの咲くこの時期にと決めた。

6.20(水)浦和6時30分出発、首都高速道路早くも渋滞、中央道南諏訪ICより、
     西麓の登山口である美濃戸口着10時。八ヶ岳山荘駐車場1日500円、3日
     分1500円を払う。美濃戸口から登山道が始まる美濃戸までは車の通る林道
     、念のためアイゼンを詰めたザックは15キロ弱。八ヶ岳へ西麓から登るのは
     初めて。15年前、まだ家内が山に付いてきた頃、東麓の本沢温泉に泊まり
     夏沢峠から硫黄岳〜横岳〜赤岳を縦走しようとしたが、硫黄岳まで来たところ
     家内の体調がおもわしくなく、北八つ方面へ転換、根石岳・天狗岳を経て黒百
     合平へ下ったことがあった。

      美濃戸まではときどき晴れ間が覗き、沢グルミ、ミズナラなどの混交林の中
     ホトトギスやウグイスそして蝉の声を聞きながら汗をかく。この山行で陽が出
     たのはこの1時間のみ。美濃戸から登山道、北沢ルートを選び赤岳鉱泉を目指
     す。早くも日が翳り曇天となる。
     北沢は鉱泉の鉄分を含んでいるためか岩も河床も皆赤黒く、暗い沢。1時半
     には赤岳鉱泉に着いてしまった。小屋前でガスの切れ目から見えるギザギザの
     岩峰 横岳は刃がこぼれたノコギリのよう。硫黄岳まで足を伸ばすか検討した
     が、稜線に出てもこの曇天は変わりそうも無いので今日は鉱泉泊まりとする。
     なんだか初めから余裕ありすぎ。ひとり一番風呂。そして生ビール。

     小屋の大部屋の窓から覗くと下山する人達が結構見える。皆、この時期に咲く
     ツクモグサが見たくて岳へ登ったのだろう。こんな場合もあるだろうと多めに
     持ってきたウイスキーとつまみでひとり宴会を続ける。何せ30人用の大部屋
     に一人だもの。まあ食事前には何人か相部屋になると思うけど。
     結局、夕食時までに大部屋は総勢5人、明日私が歩く予定の峰々を縦走してき
     た単独行の男性と午前中、仕事を片付けて登ってきた同じ職場勤めの女性1人
     と男性2人の3人グループ。

6.21(木)朝、7時、勇躍硫黄岳への急登を励む。曇天、いまにも雨が落ちてきそう。
     トウヒ、シラビソの林を過ぎ、シャクナゲとハイマツ帯に出て、赤岩ノ頭から
     の尾根道は風速10〜15メートル、時に20メートル近い突風にあおられ、
     立ち止まること多し。2時間余りで硫黄岳山頂。
     15年前、家内とここに立った時は快晴で、北八つも南八つもすべて見渡せた
     のに本日はガスで全く視界なし。強風のみ吹きすさび早々に頂上を後にする。
     濃いガスのなか、次々と現れる七つのケルンに導かれて横岳方面へ、途中、
     お腹が減ったので硫黄山荘に立ち寄りラーメンを注文。非常に良心的な一品。
     自炊道具一式と食料を持参するも小雨と強風の中でひとり食事を作るのは
     何となく侘しくてついつい小屋のメニューに頼ってしまう。澄み切った陽光
     の下、周囲の峰々を眺めながらならば出来上がるのが待ち遠しいぐらい楽しく
     自炊できるのに。

     台座の頭を過ぎ横岳奥の院へのクサリ場あたりからツクモグサが目に付くよう
     になった。曇天、強風、冷たいガスのため、開花したものも皆、花弁をすぼめ
     てしまっている。残念。なんとか写真に撮る。
     このツクモグサの花弁は淡い透き通った黄色で裏側に産毛が生えている。ここ
     八ヶ岳の横岳周辺と白馬岳の一部でしか今は見られない ということでこの時
     期訪れる女性の多くはこの花が目当て。

      横岳のやせ尾根はツクモグサ以外にもキバナノシャクナゲ、オヤマノエンド
     ウ、ツメクサ、イワウメなどが咲き乱れている。コマクサやウルップソウは
     これから。特にキバナノシャクナゲは群生し楚々とした風情を醸し出している。
     とにかく濃いガスのため周囲は全く見えないので足元の花にしか目がいかない。
     横岳頂上、11時着。大休止。携帯が通じたので家内にメッセージを入れる。
     横岳から赤岳への岩峰尾根はクサリとハシゴの連続のやせ尾根、まったく気が
     抜けない。中高年夫婦のカップルに何組か出会ったが、一部崩壊が進んでいる
     このやせ尾根のクサリ場を避け、硫黄岳方面から来た人は奥の院付近で、また
     赤岳方面から来た人は二十三夜峰付近で引き返す組が多い。

     雨が強くなり、赤岳頂上小屋泊まりと決めひとふん張り。行者小屋へ下る地蔵
     尾根の分岐に鎮座するお地蔵様の赤いチャンチャンコが雨に濡れ重たそう。
     赤岳展望荘の前を素通りし、最後の直登にかかる。200メートルぐらいの
     クサリが連続する長丁場。はじめは20度くらいの傾斜が、最後の方は40度
     を越えた。足元は名の通り赤茶けた濡れた岩、手元は濡れたクサリ、滑ったら
     助かりそうも無い。ザイルを使って岩場のクライミングに挑んでいる感じ。
     体力を使い果たして頂上小屋(2893m)にたどり着く。時に2時15分。
     あと僅か6メートルで頂上、ボヤーと霞んで頂上標識が見え隠れするが、
     どうせ視界が利かないのだから明日の楽しみにと そのまま小屋に入る。
     本日も宿泊一番乗り。可愛い娘さんのスタッフが笑顔で迎えてくれる。今夜
     の泊まりは私と夕方着くという6人の団体のみ。

     石油ストーブをつけてくれた北と東に大きく窓がある食堂でくつろぎ、晴れて
     いれば大パノラマが見られるのに・・・白いガスの檻の中で黙々と酒を酌む。
     小屋裏北側にはまだ残雪がベッタリ。ガスの切れ目に名前は分からないが小鳥
     が2羽、雪渓の雪虫をついばみながら登っている。
     夕方4時、団体さん到着。女性4人、男性2人の中高年パーティ。西麓の唐沢
     鉱泉から天狗岳、根石岳、硫黄岳、横岳を越えてきたという。休み無しで7時
     間のコースを10時間かけて歩いてきたようだ。ああしんど、もうダメと
     なかなか喧しい。まるで踏んだピークの数と歩いた距離を競った頃の若者の
     よう。明日は権現岳、編笠岳を越えて観音平まで下るという。頑張るなあ。
     夕食はカレーライス。一晩中、南西の強風が吹き荒れ、小屋が悲鳴を挙げ熟睡
     できず。

6.22(金)小屋で聞いた天気予報は午後から本格的な雨とのこと。
     いささかでもガスの切れ目をと期待したが、諦めて7時半、小屋をでる。何も
     視界の無い赤岳頂上で標識と社の写真を撮る。強風のため三脚は立たない。
     根雪の残る阿弥陀岳を廻るルートは避け、ショートカットして文三郎尾根を
     行者小屋へ向かう道をとる。雨混じりの突風の中、権現岳へのキレットと文三
     郎尾根分岐までまたまたクサリとハシゴの連続。文三郎尾根は整備されている
     がザレた登山道。カカトで踏ん張るも二度ほど、ザ、ザアーと足を捕られ尻餅
     を着く。誰も見ていなかっただろうな とつまらん見栄を張る。
     2600mぐらいのところ 雪渓の脇に峰ザクラと岳樺の群落。峰ザクラはつ
     ぼみ、岳樺は新芽がほころび始めている。

     行者小屋、9時。またまたラーメンを注文。山小屋はラーメンかおでんが比較
     的当たり外れなく食べられる。ここのは紙のように薄いがちゃんとしたチャー
     シューが半分入っている。が、汁は硫黄山荘のほうが本格派に近かった。
     雨が激しくなり、小屋からは南沢を降る。古色蒼然としたシラビソやトウヒ、
     カラマツの針葉樹林帯、林床には苔が一面に付き、北八ヶ岳方面の雰囲気を漂
     よわせているが、北八つの、あの苔の厚さ、色合いの深さ、思わず手で触りた
     いような深遠な美とは程遠い。昨夜の強風のせいかサルオガセの千切れた片々
     が登山道に灰緑のしみをつけている。

     週末を稜線で という登山者7〜8組とすれ違う。明日は晴れれば良いのだが。
     南沢は往きの鉄分を含んだ鉱泉の影響を受けて赤黒い北沢と異なり、水量は
     少ないが澄んだ明るい沢だ。途中、コイワカガミの小群落に出逢う。
      美濃戸、11時着。山荘のベンチで休憩していると傘をさした男性があらわ
     れ、近々奥さんと一緒に登りたいので下見にきました という。いろいろ聞か
     れ稜線の花々、とくにツクモグサの話をしていたら、美濃戸口まで自分の車で
     ご一緒にどうぞ と言ってくれたので喜んで便乗させて貰う。雨の中の単調な
     林道を40分歩かないで済んだ。車の中に畑で使うような品々がいろいろ積ん
     であったので聞いたところ、都下町田の住人で近くに畑を借り、無農薬栽培を
     目指して野菜作りを始めたところだという。奥さんいわく、新鮮なのは良いで
     すがものすごく高くつく野菜です と笑っていた。

     12時、美濃戸口 八ヶ岳山荘の駐車場。生ビールを飲みながらこの山行を
     振り返る。三日前、歩き始めの1時間ほど晴れ間が覗いただけで後はガスと
     風、雨の山歩きだった。しかし、15年前家内と歩きそびれたルートを完遂し
     たのと、この山でこの時期にしか見られないツクモグサを愛でられたことで、
     何となく一区切りついたのかな と納得した。
     午後4時、浦和帰着。
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テーマ:登山 - ジャンル:スポーツ


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